8ird watching「Finding Friends」全曲解説その1〜Missing Friends(feat. Alex, サーセン a.k.a.こやまさとし)〜

Finding Friends」の1曲目、リード・トラック的な曲「Missing Friends(feat. Alex, サーセン a.k.a.こやまさとし)」についてです。

まず、ボララスside。

トラックの制作について。

土台となったビートは、サンプリングCD(クリプトン・フューチャー・メディア社取り扱いのpro samplesシリーズのどれだか)からのもので、ハイハットがチキチキ言ってるパターンを選んで数種類、配置しています。

これに重ねて、ARP Odysseyでシンセ・ベースを、Pianoteqでピアノのコードを、Fender Rhodesでフック部分のフレーズを、Arturia Analog Labでピッチの揺れたシンセ・パッドを、それからアコースティック・ギター(僕が所有するtupliの試作品)でイントロ・アウトロ・間奏のフレーズを入れました。分かる人には分かっていただけるかと思いますが、このアコギのフレーズはグッバイボーイズの「今日から」という曲のイントロのピアノのフレーズをギターで弾いたものです(元々ギターで作ったイントロだったのですぐ弾けました)。

リリックについては、そもそも自分にはアイディアが無くて、そのことが8ird watchingのみならずグッバイボーイズの創作活動においても大きな課題だったのですが、それを甘茶に相談したところ、「今の関心ごとをリリックにすればいいんですよ」と言ってもらい、実際に些細な日常をラップにした(そしてそれがインパクトのある音楽となっている)ヒップホップの例も紹介してもらいました。

それなら…ということで、自分にとって目下の懸案事項である「親友の失踪」をテーマにしてみることにして、キーワード(とその親友の失踪に関する経緯)を整理して甘茶に投げ、作詞をお願いしました。

出来上がってきたリリックは、トラックに合っているだけで無く、僕の投げたテーマ(被・失踪とでも呼ぶべきか)に沿って、かつ甘茶自身の被・失踪体験も踏まえたものになっていて、なんというか、とても的を得た感じになっていました。さすが甘茶。

そのリリックを乗せた甘茶のラップは、彼自身が複数トラック分録音して送ってくれたものを使っています。そこからさらに甘茶からの提案で、フック部分でゲストラッパーをお迎えしてはどうか、ということになり、ちょうど我が家に遊びに来たミュージシャン仲間を引き込んで(※無理やりでは無く、彼らは僕がヒップホップ制作していることに興味を持ってくれていたのです、念のため)、交代交代にラップしてもらいました。それが、featuring表記にもあるように、Alex(a.k.a.やちさん from 弦内)とサーセンa.k.a.こやまさとし)の両MCです。それぞれラップは初挑戦とのことでしたが、美声で有名な方々なので、狙い通りいい感じのバラエティを出すことに成功しました。お二人とも、参加してくだすってありがとうございました。欲を言えば、お二人にはフック冒頭だけで無くもっとたくさん絡んで欲しかったのですが、これは録音当時、我が家の音楽部屋が真夏で空調もなく、暑さで長居が難しい状況だったことから断念せざるを得ませんでした。残念。

そしてこの曲では、僕自身初となるラップ(ぼ the MCとして)に挑戦しています。自分でラップして録ってみても、どうしても不慣れ感と恥ずかしさが抜けないのですが、それを言い出すとラップ・ミュージックが始められないので(やりたい)、頑張りました。

ぼ the MCの(甘茶へのかぶせじゃないところの)ラップ部分は、自分でリリックも書いていて、今年の4月、連絡のつかない親友宅を別の親友と一緒に訪ねた(けど結局会えずじまいだった)実体験を綴ってみました。フックでラップが強調されている箇所はその彼の名前と韻を踏んだところになっています(甘茶がそうなるように仕掛けてくれた)。

以上、記念すべき8ird watchingそしてぼ the MCのデビュー曲と言うべき「Missing Friends」について(ボララスside)、でした。

以下、甘茶sideです。

ボララスから断続的にトラックが送られ始めた時、ぼくは露天風呂に浸かっていました。地方への出張がてら温泉旅館滞在をくっつけるのがぼくのおとなになってからの趣味なのです。シンプルだけどひときわ輝いていたこの曲。軽快なトラックに合わせ、風呂で口ずさむフロウ(韻踏んでません)。

リリックのテーマはボララスとのやりとりの中で決まりました。ちょうどぼくの頭の中には、不可思議/wonderboy の「Pellicule」という曲の「それにしてもみんないつの間にかいなくなるな」というリリックが流れていたのでした。

今思えば、ぼろい部室で、その辺に転がっていた何本か弦が失われたフライングVを担いだぼくの、無駄に跳ねさせたビートに付き合わせた時間もまた紛れもない青春であって、それは同時に、井上陽水の「氷の世界」のような孤独と背中合わせだったんだなあと思い出した次第です。とどのつまり、この曲については、もう語るすべがないってことなんです。そう、みんなで「ABC!」って叫べばいいってこと。

最後に、内容についてではないのですが、ラップ録り終えてしばらく経つと、ぼくの生き急ぎぶりが Hook に顕著に出てしまっていたのが無性に気になったので、ボララス氏に真人間的なタイミングに整えてもらえたことをこの場を借りて感謝します。 

以上、甘茶sideでした。 

それでは。